窮地の邦人を見捨てるな
産経新聞の[北京春秋]というコラムで、以下のような記事が掲載されている。
中国語を話せる人材が総合職の3分の1を超えたとして、大手商社の伊藤忠商事が東京で記念集会を開いたのは昨年4月のことだった。そのわずか2か月前、中国当局は国家安全に危害を加えた疑いで40代の同社社員を拘束していた。当然事情を知っていたであろう同社幹部や来賓の程永華・中国駐日大使はどんな思いだったのか。
日本人の拘束は在中邦人にとって重要な安全情報だ。「(童謡の罪で拘束された)他の人たちの現状も良く分からない。同じ国に身を置く我々は不安だ」(日本人駐在員)。在中邦人の間では動揺が広がっている。1年近くたってもこの事案を把握できなかったことは記者として恥じ入るしかない。
起訴された邦人9人(うち4人が実刑判決)が「国家安全に危害を与えた」とする中国側の主張に合理性はない。中国の刑務所内の環境は劣悪とされ、精神障害を来したり獄死したりするケースもある。日本政府には死に物狂いで窮地に陥っている邦人の救出にあたるしか選択肢はないはずだ。 (西見由章)
引用終わり
この親中の企業の社員が、国家安全に危害を加える…、それを頭に浮かべようとしても、どのような事案も浮かばない。
この記事によると、同社幹部の何人かはある程度の事情は知っていたようだ。
社員個人の人権に関わることを、この企業は見て見ぬふりをするのであろうか。
日本に限らずだが、これまで中国当局によって訳の分からない罪状で身柄を拘束された事案について数え切れないほど起きている。
それに対して、日本政府はどのような行動を取ったのか。もちろん水面下で交渉、取引を重ね日中間での懸案に譲歩を行い釈放という手順を獲ったことも度々だろう。
だが、スパイ防止法一つが法制化できないわが国では、中国は当然足元を見ながら強硬手段に出る。日本からの手痛い仕返しがないとみ切ってのことだ。
このコラムのタイトルは「窮地の邦人を見捨てるな」となっているのだが、今の日本の法体系からは見捨てるなと言われても、何ら強い対抗策は打てない。
在外邦人の安全が担保されるような環境作りが必要だと思うのだが、長きにわたる見せかけの平和に浸りつくしている国民には、その思いが湧きおこらない。
最後にマスコミにも一言。
この伊藤忠の社員拘束事件を大きく取り扱ったのは、日経と産経くらいだ。
他の新聞やテレビでは、アリバイ創り程度の報道しか行っていない。
同胞が理不尽な罪を着せられて、自由を奪われていることによくも冷たくなれるものだ。と、文句を言いたい!