失われた自然は、簡単には復元できない



 雨が小降りになった合間を縫って、近所を散歩する。
私の家のすぐ隣の空き地にも、マンジュシャゲが咲き始めた。少し欲張って民家が切れた辺りまで足を伸ばすと、早くも気の早いハゼや楓の葉が色づき始めている。

 日本人は古来から自然の移ろいに癒しを求め、その中での暮らしを大切にしてきた。厳しい暑さが去った後、満を持したように草むらでは秋の虫が鳴き始め人々は耳を澄ます。
 四季折々の変化に敏感に反応して、冬は雪景色、春は満開の桜、夏は緑深まる森へと足を運び、秋は紅く染まる野山に喜びの声を挙げる。

 私たちの先祖が、
次の世代へと、気の遠くなるような年月をかけて大切に残してきた日本の自然が、外国人や外国資本に荒らされていく光景を見るのは実に忍びない。

 昨日の産経ニュースでは、大串正樹経産大臣政務官が、「事業者に違反があれば厳正に対処」すると、陳情した静岡・伊東市の漁民の人々に伝えたという記事が掲載されている。

 先日から問題になっている静岡県伊東市八幡野で、韓国財閥系企業「ハンファエナジージャパン」(東京都港区)が100%出資する「伊豆高原メガソーラーバーク合同会社」(静岡県伊東市)が大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を計画している問題で、伊東市の漁協幹部やダイビングショップの経営者らが20日、経済産業省を訪れ、大串正樹経産大臣政務官(52)と面会した。

 原因ははっきりとは判っていないらしいのだが、八幡野川を伝って土砂が流入した八幡野漁港が、茶色に変色した。このことで、地元の漁業に携わる人たちが陳情に訪れた。
 どうも、東京都内の不動産業者が無許可で、流域の森林1、6ヘクタールを伐採しており、その影響を指摘する声は大きいらしく、メガソーラーの建設に対して危機感を持ちじっとしておられなくなったのだろう。

 ハンファ側が計画しているメガソーラーの面積は、1,6ヘクタールの数十倍だという。それによって、港が変色すれば漁業に従事する人々の生活が侵される。さらに自然破壊が進み、先人が残し伝えてきた麗しい自然の景観は、無粋な無機質にソーラーパネルで埋め尽くされる。

 今、北海道などの土地が、外国資本に買い占められることが度々話題になるが、政府はこの動きにストップをかける気持ちがあるのか。
 私だけの想いかもしれないが、私は自然を愛する気持ちの大きさと深さは、世界中でも日本人が一番だと思っている。

 経済ベースで、儲かれば自然破壊など何とも思わないという意識の連中に、開発をまかせるわけにはいかない。

 経産省の関係者だけでなく、農水省国交相など関係ありそうな省庁の役人は、この際、国の命運をかける覚悟で計画の”荒探し”を行って欲しい。一度失った自然の姿を取り戻すためには、もの凄い年月とエネルギーが必要になる。

 さらに、そこに暮らす人々の生活の根本が侵されることが許されて良いはずがないのだ。