マンジュシャゲ


 人間は少しでも居心地良く生活をするために、エアコンや扇風機などを発明し、自然の摂理に逆らってきた。

 典型的なのが、私たちが口に入れる野菜などだ。ナスやキュウリ、トマトは夏野菜の代表で子供のころは、暑い夏の時期にしか口に入れることは出来なかった。

 ところが、今はスーパーに行けば、一年中どんな季節でも手に入る。
そうやって現代人は、だんだんと季節感を感じることに鈍感になりつつあるのではないだろうか。

 さらに今年のような異常高温の夏のおかげ(?)かもしれないが、夏の夜に集まる蛾などの虫や蚊が少なかった。

 そんな中で、植物たちは季節を敏感に感じ取っていると思えてならない。
家内の里から連絡があり、マンジュシャゲが見ごろだ。見物に出てこないかと誘われた。この花の別名は「ヒガンバナ」であり、決まったように秋の彼岸の時期に一斉に咲き始める。

 道端を散歩する時も、雑草の中にヒガンバナの茎がヒュルヒュルと伸びているのを見つけると「ああ、彼岸が近いな。この暑さもそろそろ終わりかなあ」と季節の移ろいを感じさせてくれる。

 家内の里では、圃場整備がすすめられた後、農家の人々があぜ道にマンジュシャゲの球根を植え付け、それを何年も続けた。もう10年ほど前のことだ。

 球根が増えて今では秋の彼岸が近づくと、見事な深紅のじゅうたんがあぜ道を埋め尽くし、刈り取りが終わっていない田んぼでは緑の稲をバックに、紅葉の秋を待つ里山の風景に彩りを添えて見事な景色をつくりだす。

 今日はあいにくの雨模様のため出かけるのを止めにしたのだが、好天の青空の下心を癒す風景にどっぷり浸かる時間を造りたくなった。明日にでも出かけてみようかなあ…。