養豚場建設反対集会に参加して

 飯田高原は、九州山地の北方に広がる標高1000メートルの、豊かな自然と素晴らしい眺望が、訪れた人々を魅了する高原だ。
 大分県では、別府に次ぐ年間500万人が訪れる観光地で、隣の湯布院と肩を並べる温泉地帯だ。

 私はここへ通いだして20年ほどになる。一昨年突然、北九州の企業が、私の住む集落から歩いて5分ほどのところへ、3万頭の豚を飼育する施設(工場)を建設すると、地元の新聞が報じた。

 風光明美な高原の広大な土地を買い占め、近代的な養豚場を建設するとして、その計画が進み始めた。
 地元の観光業者や自然保護団体、ここに憧れて別荘を建てた人々、100年以上にわたり飯田では、飼料米しかできないと揶揄されてきた中で、土地改良やコメの品種改良に取り組み、美味しいコメを作り始めた人々などが、すぐに、この計画へ反対の意思を表明した。

 しかし、水面下で事業の根回しが進められ、表面化したころには個人の地権者の多くが土地を手放していた。昨日の集会で分かったものだが、かなりの占有面積は町有地らしいのだが、そこも売買の手続きが進んでいる。
 
 昨日参加した集会は、業者、九重町、地元住民などが集まり、意見交換会を行う予定であった。だが、忙しい。ほかに予定が入った。などの理由で、業者側は一人も参加しない。町長と4人の町会議員は参加したが、7名の町議も不参加。

 決局、我々反対派の住民がほとんどという形の集会になった。
急きょ、意見交換会は不成立となったため、町への質問会ということで、集会はスタートした。

 ところが、町長は許認可の基準を満たしていて、県がOKを出せば町はそれに従うしかない。との、回答を繰り返すだけ。
 住民の中から、「この話は、となりの湯布院、南の久住町に造りたいと先に申し出た話だが、湯布院などは、名水百選の”男池湧水群”の水が汚染される。観光地としての湯布院のイメージが壊れるという理由から、議会が拒否を決め、業者が断念した経緯がある」と、町長に迫った。
 「九重町でも、町として断れるのに、なぜ、住民の意見も聞かず話を進めたのか」など町長へ質問が飛ぶ。

 広大な町有地が占めるのに、なぜ、進出にOKを出したのかとの、質問に対し、町としては固定資産税収の増加、地元からの雇用、などが理由として上げられた。
 しかし、固定資産税収入の増加よりも、養豚場からのし尿の悪臭、イメージのダウン、観光客の減少の方がダメージが大きい。雇用は、従業員は15名で、そのうち7名を地元から採用だという。

 話にならないのだが、JAぐるみ(進出企業は「JA何々ファーム」名称)で、バックに地元を選挙区とする大物議員もいるとか。
 第一、町長がJA系の人だ。
 町の人口10000人のうち、飯田高原の住民はわずか1100人、10%ほどだ。

 他の地区の人々は、飯田が汚れようが、悪臭がし始めようが自分の生活には無関係として、関心を寄せない。

 今のままでは、素晴らしい自然が破壊され、「阿蘇くじゅう国立公園」の価値まで下がって行く。
 私たちは、今後も反対の活動は続けるのだが、仲間と作戦を練り直そうと話し合って散会した。