「歴史総合」 偏向是正規定も 高校授業は変わるか



 文科省が2月14日に公表した高校学習指導要領改定案(平成34年度から実施)に盛り込まれた新設必修科目「歴史総合」に注目が集まっている。近現代史を通史として学ぶ「世界史A」と「日本史A」に替わり、近現代の大きな社会変革に着目して世界と日本の関連性を複眼的に学ぶ初の歴史科目だ。一面的な見解だけ教えないよう求める偏向是正規定も新設され、自虐的と批判されることもあった従来の歴史教育の刷新が期待される(産経新聞社会部 花房壮)

 これは、2月25日に掲載された、産経ニュースの
新設必修「歴史総合」 偏向是正規定も 高校授業は変わるか
 と、題した記事の冒頭部分である。

 これまで、カリキュラムの関係から、近現代史を学ぶ時期が学年末に集中して、中高校生は、丁寧な時間配分により、戦中・戦後の歴史を学ぶ機会が少なかった。

 加えて、教師の一部は、日本の歴史について偏向した指導を堂々と行い、自虐史観を子供たちの頭に植え付けてきたという面を否定できない。
 現代のわが国は、どのような歴史的経緯を経てきたのか。それに対する問題点はな何か。また、美徳とする歴史的事実はどんなことか。などをしっかり学ぶためには、今回の文部科学省の指導要領改定案に、期待するものは大きいといえる。

 そこで、このニュースの一部を引用させていただくことにする。

                引用開始

 インドの初代首相となったジャワハルラ―ル・ネルー(1889~1964)は、自伝で当時世界最大の陸軍国ロシアに非西洋国の日本が勝利した日露戦争について、興奮しながら日本へ対して拍手を送ったことを記述している。
 日露戦争の戦況について興奮したのはネル―だけではない。第2次世界大戦後に独立を果たしたアジア・アフリカ諸国の政治指導者の中には、ネルーと同様にロシアを破った日本に勇気と希望を抱いた人々が少なくなかった。

 新設される「歴史総合」では、ネル―らの興奮も伝わる授業になるかもしれない。国内的な視点や二国間関係で事象を捉える傾向があった現行指導要領の日本史Aに内容を大幅に見直し、「世界の中の日本」を複眼的に捉えることに特徴があるからだ。

 実際、改定案では日露戦争の取り扱いについてこう明記された。
《日本の近代史や日露戦争の結果が、アジア諸民族の独立や近代化の運動に与えた影響とともに、欧米諸国がアジア諸国へ勢力を拡散し、日本が朝鮮半島や中国東北地方へ勢力を拡散したことに触れ、各国の国内上京や国際環境の変化に気付くようにすること》

 日露戦争での日本の勝利がアジアなどの諸民族に希望を与えたーと授業で教えれば、「戦争の美化」という批判も出てくるかもしれない。しかし批判的な側面ばかりを強調して教えれば、歴史総合が重視する多面的・多角的な思考を損なうことになる。

 改定案の歴史総合で明記された注目すべき点は、全科目で求められる「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、「対立・協調」「開発・保全」「平等・格差」といった異なる視点での議論の軸を設定することだ。

             中略
 ただ、気がかりなのは、日露戦争を扱う明治期に比べ、戦前昭和期の改定案の内容が手薄とみられる点だ。

 戦前昭和期は、1910年(明治41年)から1950年(昭和25年)を扱う単元「国際秩序の変化や大衆化と私たち」の項目の一つである「経済危機と第2次世界大戦」に含まれるが、身につける知識として世界恐慌ファシズムの伸張▽国際協調体制の動揺▽第二次世界大戦の展開ーと列挙されたあと、国際連合と国際経済体制▽冷戦の始まり…と戦後に飛んでおり、現行指導要領と大差ない内容になっている。

 その前の「第一次世界大戦大衆社会」では、大衆の政治参加や女性の地位向上、大正デモクラシー、マスメディアの発達など大衆社会の形成や大衆運動を学ぶ。しかし、世界恐慌以降は「大衆」の視点が希薄で、生徒に「自分たちの歴史」という意識をどう持たせていくかが課題になりそうだ。

               引用おわり

 近現代の歴史を取り扱うとき、欠かせないのは日本が置かれた国際的な位置、それに加えてアジアの国々と欧米列強の植民地主義である。
 満州事変勃発の遠因となる欧米の国々の中国支配、それに遅れをとったアメリカの焦り、なども避けて通ることは出来ないのではないか。

 さらに、アメリカとの戦いの始まりは、ABCD包囲網および真珠湾攻撃直前のハルノートだ。はじめから日本が飲めそうにないことを要求したハルノートの内容。これを客観的に扱い、生徒たちがどのように反応するかをみたい気がする。

 今までは、日本が中国を侵略、それを阻止しょうとしたアメリカをはじめとする欧米諸国。エネルギーや鉄鋼を絶たれた日本が、東南アジアに目を向けて、侵略の拡大を始めた。などと、一面的に第2次大戦のことを生徒は教えられてきた。
 だが、多面的・多角的な取り扱いをすれば、一方的に日本が悪いと決めつける可笑しな歴史観はかなり是正されるのではなかろうか。

 自虐史観で、生徒たちから日本人としての誇りを奪い取り、一方的な歴史観を植え付けてきた教育現場の姿が、改められていくことに期待したい。