忘れられぬ夏の夜に・・・

 郷では音楽好きが多く、毎年いろんなコンサートが催される。
今年は春の野外コンサートがあったのだが、昨夜は室内でのフラメンコ・ギターのコンサートが開かれた。
 「フラメンコ・ギターとワインの夕べ」
と銘打って、郷の仲間、郷近くの懇意な人々などが集まり、それぞれが飲み物や手料理を持ち寄って、パーティ形式の音楽会だ。
 
 中には25年物の甲州ワインを自分のワイナリーから持参した人もいる。しかも一升瓶。私は体調の具合からたくさん飲むわけにはいかなかったが、辛口の年代物で、山梨のワインってこんなに美味しいのかと、感心してしまった。
 
 肝心のコンサートは、長年スペインで研鑽を積み、お亡くなりになった俳優の天本英世氏と、彼のガルシャ・ロルカの詩の朗読、そのBGM演奏を長期間担当し全国各地で好評を博したフラメンコのギタリスト「北御門善幸」のフラメンコ・ギターを中心に進められた。
 
 5曲ほど終わったところで、休憩に入り持ち寄った料理や飲み物に手を出しながら参加者の会話が進む。
 10分ほどして、演奏者は再び正面に座りギターを弾ける状態でスタンバイ。
突然、今夜の主催者から合図があり~♪ハッピーバースデイ、トゥ~ユ~と馴染みの旋律が流れ始めた。
 
 あれっ?今日は私の誕生日なのだが、私のほかに同じ誕生日の人が居るのか?と、会場を見まわした。
 すると、主催者が
「ゲンさん、お誕生日おめでとうございます」と私の方にやってくる。
後方で参加者から一斉に大きな拍手が、会場に響いた。
 
 私は、このサプライズに舞い上がり、どのようなアクションでお返しすれば良いのか戸惑う。
 すると、私の横に座っていた私の奥方が立ち上がり
「済みません。マイクを貸していただけますか。不器用な主人の代わりに私が・・・」
と、いきなり
~♪ありがとう、みなさん。ありがとう皆さん~と
ハッピバースデーの旋律と同じ節で、お返しの唄を歌ってくれた。
 
 ずいぶん長いこと生きているのだが、昨夜は私にとって忘れられない素晴らしい夏の夜となった。