家内の漫談に、ご老人大笑い

あちらこちらで桜の満開、花見のニュースが発信されている。
 大分もようやく昨日は開花宣言がなされた。私の住む町は寒いところだからか、街を流してみても少しずつ花は開いているが、満開になるのはいつごろだろう。
 
 ところで、3月もそろそろお終い。
家内はいつも訪ねる老人施設で、今日は落語の話しを一席ブツことになった。
 「季節がら古典落語の名作『長屋の花見』をご老人に話してみてはどうか」と提案したのは私。
家内は「落語なんて経験が全く無いし、そりゃあ無理だわ」
「大丈夫だよ。お前のアドリブを満載して話せばよいのだし、話しの骨組みに『長屋の花見』を使わせてもらえば良い。構成は私が考えてやるから安心しろ」
 と、わたし。
 
 ということで、数日前から資料を調べ、準備するものを整えて行く。
そして、ご披露する今日がやってきた。
家内に割り振られた時間は30分。中には「もう少し長く話して欲しい」という方もいらっしゃるのだが、ご老人たちの集中力を考えるとこの30分という時間を守るのも大切な要点だ。
 
 事前に家内が桜にまつわる話を行い、施設に近いところの桜の情報に触れる。その後、花見の歴史や「長屋の花見」の大まかな流れを話して、本題に入った。
 何せお年寄りばかりに話すわけだから、普通の人々に話しかける手順通りにはいかない、それなりの工夫が必要だ。
 
 展開は落語とは異質な家内独特の話しの世界に突入して行く。
私はそばで様子を見ながら、これは落語では無くて漫談だなと、合点して話に聞き入った。
 家内がふんだんに身振り手振りに加えアドリブを連発。長屋の住人の”店賃”に関する話、雨降りのとき長屋があまりにも雨漏りがひどいので、みんなで雨宿りの為外に避難する話などに加え、タクアンで作った卵焼き、大根を半月状に削ったかまぼこを食べる仕草などに、ご老人たちは大笑いの連続。
 
 日ごろとても退屈しているご老人が多いので、施設の中の会場は久しぶりに大きな笑いに包まれた。
 医者に言わせれば、ウソ笑いでも良いから笑いなさい。笑えばNK細胞が活性化するという。
 
 最後の、茶柱ならぬ”酒柱”が立つという”落ち”であっという間の30分が終わった。
 最近は私たち夫婦は忙しいので、月に2回のパターンが崩れ、月に1回しかこのような催しが出来ないことが多い。
 今ではご老人達の中に、家内のファンが出来て施設での家内の話を心待ちにしている人が増えているらしい。
 いつも、主役は家内なのだが、私は裏方に徹して、どんなことをするか、どのような話を題材に使うかなどを考えてやるに過ぎない。
しかし、夫婦で2人3脚を続け、喜んでくださるご老人が居る限り頑張ろうと、話しながら我が家を目指した。
 さあ、これからは私たちの本業が待っている。
あと、ひと頑張りしなきゃあ・・・。