老人ビジネス

私の家内は大のお風呂好きだ。
 市内にはいくつかの温泉施設があり、暇ができると出かける。
同じ市内の人が多くやってくるので、そこではたくさんの顔見知りができる。
ああ、江戸時代の銭湯はこんな具合で、大きな社交の場であったのだなと、私は家内から温泉でおしゃべりしたことの報告を聞く。
 
 昨日、家内は帰宅するなり
「今日は○さんから、『どこそこの老人介護施設の幹部から、○さん、ヘルパーができる人を探してくれないかと、頼まれたんよ』との話を聞いてきた。そういえば叔母さんが入所しているところも最近は、ヘルパーさんがどんどん辞めて手薄だと聞いたよ」
という。
 
 私が家内のお伴をして出かけたとき、外で待っていると入所者のお爺さんが話し相手を探して、私のところにやってくる。私の横に座るとすぐに施設であったことを話しだす。最近はヘルパーさんが少なくなり、施設のサービスが低下している事を、愚痴ることが多い。
 
 ヘルパーさんの仕事は肉体労働が多い。入所者の中にはわがままな人も多く仕事としては大変苦労の多い部類に入るようだ。
 
 それでも、経営者はビジネスチャンスと考えるのだろう。田舎で新しい建物が建設される中では、老人介護施設が多い。
 そんな施設で一番に始まるのは、ヘルパー2級などの資格を持った人を探す作業だ。
 ところがこんなに手薄なヘルパーさんの待遇が改善されると言う話は、どこからも伝わってこない。せめて、過酷な労働の対価として、それに見合う待遇に恵まれればこのように介護士不足が取りざたされることは無いはずだ。
 
 政府は介護保険制度を何年か前にスタートさせたが、いつの世でも必ずそれを食い物にする連中が出てくる。
 そんな連中は政府からの介護保険制度による補助金をうまく運用して自らのビジネスを発展させようとする。
 雇い入れる職員の待遇や入所の暮らし易さを考えるのは2の次だ。
すべて、いかにしてこのビジネスから利益をあげるかに頭を膨らませる。
 
 団塊世代の人々が70歳を迎えるのは、2~3年後だ。日本の老人社会はまだまだ進んで行く。私はこういった施設の問題、家庭で老人をみとることができない社会構造などを考えたとき、気持ちは深刻になるだけだ。