高原はもう初氷

 このところ、忙しさで飯田高原へ出かけることが少ない。
一昨日は飯田の知人から、久しぶりに顔を見せないかとのおさそいの連絡があった。
所用を片付け昨日はお昼前に、飯田を目指して家を出た。
 
 2時間近くかけて到着すると、家内が懇意にしている露店で野菜を売っているおばちゃんが
「ホタルちゃん、今朝は初氷が張って震え上がったわ」との挨拶。
私の家内は、飯田では「ホタル」という名で呼ばれている。私は「ゲンさん」誰も本名など知らぬままの付き合いだ。
 
 飯田の隠れ家に着き、家の周りをぐるりと一周する。
郷の仲間から連絡があり、玄関の上にかけられたスズメバチの巣は、きれいに駆除されていた。
 南側の桜の木には、いつ生ったのかたくさんのアケビの実がパックリ口を開けてぶら下がっている。
 ほとんどが中身は空だ。少しは実が残っているのもあるが食べてもそんなに美味しいものではない。
 
 いつもなら郷人が何軒かやってきて、挨拶を交わしたり情報交換など行うのだが、今回は誰も現れない。
家内は早速野菜のおばちゃんのところに出かけ、手伝いやら世間話に花を咲かせる。手持無沙汰の私は、ウオーキングに出かけ例の大騒ぎになっているはずの養豚上の建設予定地あたりを歩いた。
 予定地近くには、建設反対などの立て看板があるのだろうと近寄ったが静かなもので、立て看板など目につきもしない。
 
 買収対象の田んぼでは、稲が実り刈り取りを待つだけのようだ。きっと、稲刈りが終わると建設工事の準備が進むのかななど、考えながら額から噴き出す汗を拭って歩くことに精を出した。
 
 夜の食事が終わり外へ出てみると、ヒンヤリした夜気の空にばら撒かれたような星の数々。
 家内に声をかけ家の明かりを消してもらう。
漆黒の空に広がる隙間の無いような満天の星。
ここでは「天の川」がはっきりと見え、知らない名前の星座群が夜空を飾る。
その光景は、都会では街の灯りが邪魔して見当もつかないのではなかろうか。
 うっとりしていたら、いきなり流れ星が斜めに空を横切った。ここでは、流れ星まですぐ近くに見える。
 
 夜気の冷たさが身体を包み込み、私たちは家の中へと逃げ込んだ。
人も居ない。テレビの番組もいくらも見ることができない。外に買い物へも行けない山の中だが、最近の忙しさからは充分距離を置くことができた。
 
 今日は、ウオーキングだけ済ませてお昼前に山を降りた(私たちは飯田を後にするときには山を降りるという表現をする)
 途中、もう一人の叔母が入所する老人施設へ立ち寄り、ここで日常に戻った。
明日からは、また、忙しい日々が待ち構えているのだろう。