地熱発電と規制緩和

環境省は、今まで国立公園地域の環境保全対策で、高さ制限を超える建築物の建設やとくに環境保全が必要な「第一種特別地域」の開発に対する条件を緩和するようである。
 今まで規制区域の地下1500メートルから3000メートルを掘削して、熱水あるいは高温の水蒸気を取り出すことには、規制がかけられ国立公園内では、むやみやたらに熱水を汲みあげる井戸を掘ることはできなかった。
 
今度の規制緩和策は、規制地域外から斜めに井戸を掘り進み、規制区域内にある熱水源から高温の熱水を取り出すことなどが可能になりそうだ。当然規制区域を広げることも緩和策の中に盛り込まれそうだ。
 
 私が若い時から気にいって通う飯田高原では、日本最大級の地熱発電所がずいぶん前から運転されており、環境に優しい自然エネルギーの利用が盛んである。
 私も数年前に家族を連れて、その地熱発電所を見学したことがある。
係の人の説明によれば、地熱を探り当てたり地元への環境保全にどのような影響が出るかなど、長期間の調査が必要らしい。
 
 さらに、設備などの初期投資が膨大であるが、設備が完成して一端発電が始まると、あとはかなり抑えられた維持管理費のもとで、環境に優しいエネルギーを収得できるとのことであった。
 
 大震災のあと、再生エネルギー法案が、官内閣のもとで可決され日本のいたるところに、雨後のタケノコのように建設された太陽光発電施設。一見するとCO2を出さない環境に優しいエネルギーのように思われているが、地熱発電などに比べると、CO2の排出はあるらしいのだ。
 
 地熱発電所の人は、何度も地球にやさしいエネルギーが地熱発電だと繰り返し説明の中に入れていた。
しかも、日本は名だたる、火山国であるため地熱エネルギーの埋蔵量は世界第3位とか。こんな話を聞くと、どんどん地熱発電を推進して欲しくなる。
 
 だが、地熱発電の泣き所は、熱源がほとんど国立公園内という風光明美なところだ。
 商業ベースで考えれば、お構いなしに地面を掘り返してエネルギーを取り出すことに賛成の人々も多いだろう。
その結果、山が荒廃し、風光明媚な国立公園内での環境破壊が起こり、良いことばかりではない。
 
 温泉一つを例に挙げても、温泉好きの日本人が満足するため、大分県内などはどこもかしこも温泉が掘られて、最近は温泉が出なくなったなどの声を聞く。
 
 安易な姿勢で、地熱発電開発の規制緩和を行って欲しくはない。
この、美しい日本の環境を次世代にそのままの姿で引き渡すのは、我々世代の責任だと思うのだが。