住民投票で残る懸念

大阪都構想が反対派に敗れ、橋下市長はすぐさま記者会見で今の市長の任期が終われば、政界から引退すると明言した。
 続いて、維新の党の代表江田憲司氏も辞任を表明。
下手をすると、維新の党の分裂に発展する恐れが出てきた。
 
 橋下氏のカリスマ性と関西での抜群の人気、知名度に頼りすぎた党の体質がさらに大きな影響を及ぼす可能性を見せ始めている。
 
 それは安倍政権が見据える”憲法改正”の問題である。
維新の衆議院における40議席は、憲法改正を発議する上での強力な力だ。
衆議院での3分の2は、維新の協力を得れば十分にハードルを越えることができる。
そして、次の参議院選挙で自民も維新もそれなりの結果を残せば、参議院でもハードルの3分の2をクリアーできるだろう。
 
 ところが、橋下氏が政界から姿を消し、維新の党をリードしていく人材に恵まれないような事態が起こると、民主党勢力に呑み込まれかねない。
維新が空中分解すれば、改憲の青写真が白紙に戻りかねない。
 
 少なくとも、衆参両院の3分の2が賛成という発議の条件に、安倍政権は着々とコマを進めていたし、このチャンスを逃すと次のチャンスがいつ訪れるかわからない。
 
 懸念材料がもう1つある。
今度の大阪の住民投票での民意の動きと、それに対する準備の進め方である。
橋下陣営はかなりの年月を使い、事あるごとに都構想を訴えてきた。
しかし、訴える側の気持ちが上滑りして、この構想がなぜ必要なのか。どうして改革を進めなければいけないのか。その結果どんなメリットがあるのか、などを丁寧に説明していく手法に問題があったのではないか。
 
 反対派が、大阪市を失くせば敬老バスの無料得点は無くなりますよ。二重行政の無駄は府と市で話し合えば解消できます。大阪市が無くなり都になれば、今までの住民サービスが行き届かなくなりますなど、住民のごく身近な生活に根差した意見の方が説得力があったということだろう。
 
 憲法改正でも似たようなことが言える。
改正反対の連中は、すぐさま、日本が戦争に巻き込まれる。あなた方の子どもの命が危なくなります。平和憲法をなくしたら今の平和な暮らしはできませんなど、お得意の感情に訴える論法で国民の気持ちを不安にしていく。
 大阪市民の場合と同じで、国民の大半はこのような自分に直接降りかかりそうな不安を煽りたてる方が効き目が大きいのだ。
 
私が言いたいことは、こんどの大阪の住民投票の結果や原因をとことん調べて、時間をかけた解りやすい憲法の改正話を国民の間に広げて行く努力が必要であるということだ。
 
いくら国会議員の間で発議ができても、国民投票で否決されればそれまでのすべての努力は水泡に帰す。
 
 ともすると、こんな議論は大上段に構えて専門的になりかねない。それよりもっと解りやすく、何故改正が必要なのだということを、周辺諸国の事情を説明したり事例をあげたりして啓蒙活動をしていかなければならない。