全国学力テストに思う

 昨日、全国の小6と中3を対象とした全国学力テストが行われた。
今年は、国語、算数(小6)、数学、理科が対象科目になった。
 
 最近はどこの自治体も、その結果次第で非難されたりお褒めの言葉をいただいたりで、良い結果を残そうと、始まった当初よりその対策を真剣に考え始めたようだ。
 
 この学力テストで気になる点がある。
 
 一つはその対策だ。
 
 自治体によっては、新学期が始まるや新しい学年の学習はさておいて、来る日も来る日も過去問を解かせて、その対策に時間をかけるところがあるという。
 そのしわ寄せがその後の授業に現れて、学習内容を乱暴に消化してゆくなどのうわさが耳に入ってくるのだ。
 
その自治体では、 学力テストの方は、対策が効いたのか、その県内ではかなり上位の成績を修め、各地から関係者が視察に訪れる。
 
 ところが、このテストの結果が良くても、真の学力が付いているのかという点では、かなり疑わしい。
 その後の生徒の進学の様子などから、本当の学力向上はなされてないのではと思ってしまうのだ。もちろん、進学実績で学力の善し悪しをはかることも問題がないとは言えないが、一つのバロメーターになることは間違いない。
 
 もう1つの問題は、結果の運用についてである。
 
 静岡県では、知事が成績の悪い学校は公表するとか、大阪府では高校進学の資料に使うとか、取りざたされている。
いつの間にか、文科省がこのテストを実施するための狙いが、独り歩きして主催者の意図するところからどんどん外れて行くような思いに駆られるのだ。
 
 お断りしておくが、私は、この学力テストには反対ではない。
学校現場、教師、生徒などに適度な緊張感を作ることは、学力向上という観点から必要なことだと思う。教師の立場からも、自分たちの授業の参考や反省の材料としても、客観的な事実が把握できて良いと思う。
 
 さらに為政者の立場からも、我が国の児童の学力は平均してどの程度なのかを掴んでおくことは、教育行政を施行していくという面で重要であろう。
 
しかし、テスト実施の目的が文科省の狙いとは別のところに焦点が当てられて運用されるのでは、実施する意味がないのではないか。
 
 なにはともあれ、8月ごろには昨日のテスト結果が判明するらしい。
それまで関係者は時間をかけて、公表の問題点や運用面の疑問などを検討し、意味ある学力テストに育てて行って欲しい。