やはり?

 川崎市の老人ホームで、相次いで3人のお年寄りが転落死した事件。
世の中には、いじめや幼子を手にかける、虐待を繰り返して命まで奪う。このような悲惨な事件が後を絶たない。
 
 その中でも、この川崎市の老人ホーム「Sアミ-ユ川崎幸町」での連続して3人の老人が、施設の高所から転落防止用のさくを乗り越え転落死した事件。
 
 この事案は多くの人が、人為的に起こした事件であると疑っていたはずだ。
それが、昨年5月入所者の財布を盗んだ容疑で逮捕され、取り調べを受けていた元職員の今井隼人(23)が「自分がやりました」と自供した。
 
 今朝はこのニュースがテレビなどで伝えられているが、事件が公になった時から誰もが、この施設の職員による犯行だと思っていたのではなかろうか。
 
 私はこの事件が、我が国の高齢者を取り巻く負の環境が露わになった一例だとして、とても心が痛む。
 高齢者を狙う特殊詐欺、増え続ける認知症患者の問題、人生設計の計算狂いから起こる高齢者の貧困、誰にも相手にされず独居老人として人生を終わる孤独死など、高齢者を取り巻く環境は問題ばかりが噴出して、政治や行政の対応はおおきく遅れたままだ。
 
 もちろん、このような諸問題については、本人の責任と言う面もあるだろう。
しかし、数十年前の私が子供のころの時代とは、年寄りをめぐる環境は大きく様変わりしている。
 この事件の場合は、捜査が進まねばはっきりと言うことはできないが、犯人の供述通りだとしたら当然この容疑者が一番悪い。
 だが、このような老人施設を運営する「Sアミ-ユ」という運営母体には何の責任もないのだろうか。
 
 ヘルパーなどを薄給で雇い、熾烈な環境の中で働かせる。
経営者は、国からの介護保険の恩恵を受け、利益を一人占めする。このような構図が一部では出来上がっているのではないか。
 
 特に地方に暮らす私などには、新しく町の様子が変わるシーンは老人ホームの建設だけだ。
過疎の田舎ではヘルパーを集めようとしても、中々薄給の上過酷な労働という環境ではどこもヘルパー不足。
 それは、たちまち入所の老人へ、しわ寄せされる。
 
国や行政が行う施設の査察は、いつもあらかじめ予告してから実施される。
予告なしでいきなり調査しなければ、実態など分かるわけはない。
施設と役所が”なあなあの関係”であればどうにもならないが、それでこのような問題が解決されるはずはない。
 
 老人をあづけている家族は、施設に対してはお世話になっていると、誰もが低姿勢だ。施設でどんなことが行われているかは、老人に認知症でも出ていれば家族は実態が分からないままだ。
 
 川崎のこの事件を契機に、国も行政ももう少し老人問題を我がこととして真剣に考えて欲しいものだ。