自然の宝庫

 22日(土)午後から暑さを逃れ、飯田高原へと逃げ出した。
郷が近寄り広い田園地帯の道路脇に、ベニヤ板でいかにも急こしらえしたと思われる看板があちこちに立っている。
 
 その近くではどこかの高校の陸上部の生徒たちが、マラソンか駅伝の高地練習に来ていて、盛んに長距離を走る練習に余念がない。 ここは、九州ではかってマラソンの名選手、宗茂宗猛の兄弟や有名な女子マラソン選手が、高地トレーニングを重ねたところだ。
 
 今でも九州のあちらこちらから、名門陸上部の選手が合宿にやってくる。
車の中から思わず「頑張ってえ~。ご苦労さん」と声をかけてしまう。
 
 ところで、郷について仲間に看板の事を訪ねると、県外の業者と地元のJAが合意して、すぐ近くに大きな養豚場の建設を計画しているとか。
 用地買収も進んでいて、8000~1万頭の豚を飼育する養豚場の建設計画を、発表したことへ地元の農家の人々が、反対を表明して反対運動を始めた、看板はその反対運動の為のものだと解った。
 
 8千頭から1万頭の豚を飼育する規模というのが、私には想像がつかないが、その豚たちの排泄物の処理や鳴き声、匂いなどはどうなるのかといろんな疑問が頭をよぎる。
知り合いの農家の人に尋ねると、地元への説明は無いまま話が進み、最近になってようやく説明会を開いたらしいが、「業者は良いことしか言わなくて、全く信用できない」と立腹している。
 
 元々、九重連山のふもとの「阿蘇くじゅう国立公園」内であるため、たくさんの規制がかかっているはずなのに、町はこの計画にOKを出したという。
 
 観光客相手に生活している人が多い高原だけに、環境保全の問題も気になるし、近くには俳優の榎木孝明さんの美術館などもあり、これからどのように話が展開するのか解らないが、注目する必要がありそうだ。
 
 土曜日は、夕方に到着したので、そのまま夕餉の支度とか一人で来ていた他の仲間との夜の打ち合わせなどするうちに夕日が傾き始めた。
 管理組合長のタクチャン夫妻は、地元の人たちとの会食ということで、夜は「カナメちゃん」と3人での食事となった。
 
 私たちの郷での夜の食事は、必ず数軒が食材を持ちよりみんなでワイワイとにぎやかに行う。その夜は3人だけの食事となったが、ひと月ぶりの再開だけに話は盛り上がった。
 
 次の日の朝、6時に起床する。外気温は14度。半そで短パンでは寒かったが、高原の空気を体いっぱいに吸い込みウオーキングを始めた。今日は日中は気温が上がり紫外線がきついという。私はそれを嫌い、お日様が高く昇る前に家を飛び出した。15分も歩くと身体は汗が噴き出して、さっきまでの寒さは何処かえ消え去っている。
 
 適当に朝の高原をドンドン歩くわけだが、今は草花の端境期なのか、道脇の花が少なくてやや物足りない。
 
 あと、2週間もすると、釣り舟草やフシグロセンノウ、キツネのカミソリなどの初秋の高原の花が咲くのだが、今はその気配もない。
 
 汗ばんできたのでシャワーを浴びるために家に帰ると、玄関のところに黄色の羽をした虫が多数飛んでいる。
 さらに近寄ると、たくさんのスズメバチ。おそらく20匹ほどだろう。
こんなに飛んでいるというのは、近くに巣をつくっているに違いないと、私は家に入らずしばらくスズメバチの飛ぶ様子を眺めた。
 中では家内が、すやすやと睡眠中のはずだ。
 
 私はスズメバチが、くるくると飛び回る屋根の下を見つめた。そこに直径20センチ長さが25センチほどの巣がぶら下がっている。
 
 どうやら「こすずめバチ」の巣のようだ。飛び回るハチの大きさも黄色スズメバチくらいでそんなにでかくはない。
それでもスズメバチは怒らせると厄介だ。私は昨年刺されているのでハチを刺激しないように玄関を開けて家の中へ入った。
 
 我が家の玄関は、高さ1.5メートルの基礎の上にあるので、階段を1.5メートルほど上らねばならない。すると、玄関の外の屋根に下がるスズメバチの巣までは、わずか1.5メートルほどだ。玄関を開けるとき2匹のスズメバチが足元をぶんぶん飛び回りながら、私を警戒している。
 
 部屋に入るなり家内を起こして、どうするかを話し合った。
今のうちに殺虫剤でやっつけて巣を落とす。子どものころに竹の棒の先に、くちゃくちゃにもんだ新聞紙をまいて火をつけ、巣にかざす。ハチは羽を炎で焼かれて次々に落下。そのすきに巣を退治する。
 そのまま11月までほったらかしておく。スズメバチは気温が10度未満になると活動できなくなり、どこ変え姿を消すか死んでしまうのでそれを待つ。
 
 この3案が出た。結局私が強く主張した、そのままほっておくことに決めた。
9月の途中からは子育ての為、警戒心が強くなるので気をつけなければならないが、その時期以外では刺激するような振る舞いをしなければ、スズメバチは襲ってはこない。
 大スズメバチや黄色スズメバチなら、今のうちにやっつける必要があるがこのスズメバチは、こちらが危害を加えようとしなければ、共存は可能だ。
 
 今年は、他の用事で中々来られないので、セキュリテイをハチに頼むことで1件落着。スズメバチは食事の用意の為か、朝の行動が活発だが、午後になると比較的静かにしている。夜などは私たちがどんない頻繁に出入りしても、じっと巣を守っているだけだ。
 
 その習性を家内に良く言い聞かせて、その日も昨夜と同じ3人で食事を楽しんだ。
今朝は、帰りの荷物を車に積も混むときだけは、私たちの周りを激しく飛び回り警戒心全開のようすであった。
 私が荷物を積み込むために数秒間玄関を開けたままにしたら、早速、家の中へと飛んで行った。
 家の中では、食料がないので次に私たちが来たときは、家の中で一生を終えているだろう。
 
 明日はどうやら、台風15号が長崎当たりを目指して北上の様子だ。コースとしては最悪だが、何とかもう少し勢力が弱まることを願うばかりだ。