シャドーバンキングと中国の危機

 先日放映されたNHKの番組で、次々に行き詰まり破たんに追い込まれた”影の銀行”と、それに投資した市民の様子をドキュメントしたものが扱われた。
 
 民間の怪しげな銀行が、年利20%と日本では考えられない高金利をうたい多くの市民から投資金を集め、どんどん破たんしていく。
 
 シャドーバンキングの融資先は、マンション建設などの不動産会社だ。ところが中国の不動産バブルは、ずいぶん前から売れ残りが目立ち始め、多くの都市部にゴーストタウンが出現させている。
 
 当然融資した金は焦げ付き、影の銀行の経営者は雲隠れ。
金利に踊らされて、なけなしの金を預けた一般市民は、投資したお金の回収ができずに途方に暮れている様子を、TVカメラは追っていた。
 
 このような事情で、倒産した影の銀行は、中国全土で一万件以上に上るらしい。
この民間銀行にお金を預けた一般市民は、1000万人をこえるとか。
 
 異常な格差社会の中国では、共産党の幹部や起業して成功をおさめた人々のような大金持ち、辛抱して将来のためにお金をためた市民、地方政府などに対して訴えることもできない低所得の農村部の人々と、いびつな社会構造が定着していっている。
 
 中央政府は、人々の不満をそらすため、今までは日本バッシングなどを、陰で操り尖閣国有化直後のような在中日本企業を市民が不満のはけ口として襲ったりしたが、そう何度も同じ手は使えない。
 
 最近では、虎もハエも叩くと宣言して、共産党や地方政府の大物をターゲットに狙いうちをして逮捕、裁判にかけたりしている。
 
 国民は、習主席に喝采を送り、支持率が大きく伸びたとマスコミはほうどうしていた。
 
 しかし、今中国で起こっているシャドーバンキングの破たんに対して、中央政府は何も出来ぬままだ。
 必然的に国民の不満は、中央政府に向かうのではないか。
 
今までの小手先の、国民の不満をそらすような手段は最早通用しなくなっていく。
 
その最中のAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立の動きは、まさに中国の断末魔の姿と言えるのではなかろうか。
 
 参加国から資金を集め、どのようにして融資先を決めるか、金利は、回収の具体策は、など、、何もはっきりしないまま、しきりに日米に参加を呼び掛けている。
 
日本国内でも、野党や、朝日、毎日、東京などの新聞は盛んに今すぐ参加を決めるべきだと、安倍内閣の方針を批判している。
 
 中国経済のバブルがはじけて、国家そのものが危機に陥るといわれ始めて、ずいぶん久しい。
それが、中国のあちらこちらで起こるシャドーバンキングの倒産の連鎖から、いよいよ中国の危機が現実味を帯びてきたなあと思った次第である。